偉大なる打ち切り漫画、「どろろ」について1

手塚治虫の中でも、カルト的な人気を誇る「どろろ」は、週刊少年サンデーで1967年から連載が始まり、一旦は掲載元を秋田書店の『冒険王』に変えて1969年に完結した。

 

本作が打ち切りとなった理由として、少年漫画的でなく、内容があまりに陰惨であることが一般ウケしなかった理由として挙げられている。

 

確かに連載で、ハードな世界観を延々と読まされれば、大抵の読者は逃げるだろう。もちろん、暗くなり過ぎないよう手塚流のギャグ調の明るさはあるものの、全体を通して救いがない。

 

◎本作のあらすじ

時代は戦国時代、とある国の主、醍醐景光は国の存亡を賭ける戦いを前に必勝祈願のため、山林の奥にある寺の堂で祈祷する。

ーーと、彼の願いを聞いた魑魅魍魎たちが、仏像の裏から景光に取引をもちかける。

 

曰く、こんど生まれてくる景光の赤子を生贄にすること。

 

景光は、悪魔の取引を行い国の維持を優先した。

 

結果、生贄となった赤子は契約の通り、48カ所が欠損した状態で生まれてきた。そのあまりの醜さに景光は、赤子を川に流して捨てるように指示する。

 

この赤子を偶然にも、医者の寿海が拾い、失った手足を木製の義手などで補い、ひとりの「人」として成長していく。

その過程で、この子供が魔物を呼び寄せる不思議な体質であることを知り、寿海は彼に無銘の太刀を渡し、自身を守れるように訓練させた。

 

そして、14年後。

 

48か所を欠損して生まれた赤子は、立派な青年「百鬼丸」として成長する。彼は、自身を受け入れてくれる場所を探すため、寿海のもとを離れ、孤独な旅に出た。

 

道中、大人たちに袋叩きに遭っている子供「どろろ」と出会い、妙な縁から共に旅をする。

 

これは、失った体を取り戻す青年と、ある使命を秘めた子供の物語。

 

◎本作のおすすめポイント

何といっても、まずギミックのカッコよさ! 筆者が一番の推しポイントとして挙げるのは主人公・百鬼丸の戦闘ギミックだ。

彼は48か所を奪われた状態からスタートしているため、普通の人間よりもハンデがあるハズ・・・そう考えるのが普通の感覚だ。

しかし、本作はそのハンデを逆手にとって、戦闘ギミックを充実させている。

まず、メイン武器となる腕には、刀が仕込まれており、戦闘時には鞘となる上腕を引き抜き白刃を露わにして妖魔を斬り伏せる。

その鮮やかな戦闘描写は、第1話から炸裂。

 

物語冒頭、木橋を襲う巨大な妖魔を斬り伏せるため、百鬼丸は身軽に敵の攻撃を躱しながら鮮やかな太刀さばきで敵を斬捨てる。

 

このシーンだけで、彼の誕生秘話が明かされる前だというのに、百鬼丸という男が常人と異なる存在だと読者は理解する。

 

半世紀以上前の作品にもかかわらず、腕に隠された刃で闘う・・・・・新しい! その上カッコいい!

しかも、長い髪を後ろで束ねている姿も、このギミックと相まってがイイ!

後ろ髪を靡かせながら颯爽と妖魔を斬り伏せる主人公!

 

これだけで、中二病な筆者のハートは完全に仕留められた。

しかも、この怪しい男・百鬼丸の誕生秘話を知った時、さらに彼の運命の過酷さに同情と共に応援したい気持ちになってくる。

 

子連れ狼よろしく子供を引き連れ、各地で暴れまわる妖魔たちを退治しながら旅を続ける、一種のロードムービ―感。

そして、次々と取り戻される肉体と引き換えになる「強さ」

 

堪らんですよね。もうね、これでもか!ってほどにラーメンを盛るお店みたいに大好きな性癖よくばりセットを詰め込んでくれてますよ。

 

 

 

まだまだ、語り足りないぜ! ってことで、次回はどろろが掲載されてた時代背景をもとに語ります!